解散から34年を経てザ・フォーク・クルセダーズが再結成したのは昨年のこと。「イムジン河」「悲しくてやりきれない」といった30年以上前の楽曲が改めて再評価された。ここ数年の音楽業界を眺めてみても、井上陽水、小田和正、中島みゆきといった、1970年代中頃から“ニューミュージック”と呼ばれたシーンを作ったベテランたちが再び脚光を浴び、新たな若いファンをも開拓して好セールスを記録している。あるいはここ2〜3年のトリビュート・ブーム(一例にブルーハーツ、はっぴいえんど)、カバー・アルバムの大成功(松任谷由実、スピッツ等)が顕著である。そういえばと振り返ってみると、KICK THE CAN CREWによる山下達郎「クリスマスイブ」のカバー、FLOWによる海援隊「贈る言葉」のカバー、ビリケンによるイルカ「なごり雪」のカバー……。また、阪神淡路大震災の焦土を唄ったソウル・フラワー・ユニオンとヒートウェイヴの合作「満月の夕」が、発表当時はごく一部にしか広まらなかったにもかかわらず、今年になってガガガSPのヴァージョンがチャートの上位にランクインするなど、カバーやトリビュートの企画は枚挙にいとまがない。さらにTHE BOOMの「島唄」が発売後10年を経て地球の裏側アルゼンチンで大ヒットし、ワールドカップの話題とともにリバイバルヒット。そして、TV主題歌として使われることでブレイク中の常連(!?)、山下達郎「RIDE ON TIME」と森田童子「ぼくたちの失敗」etc。
 かつて多くの人たちに支持され、愛された歌(作品)が、その当時を知らない若い人たちに発見され、認められ、愛聴されるようになってきた。ある時期に一世を風靡したアーティストが、影響を受けた次世代アーティストに改めてリスペクトされ、その作品がカバーされたり、トリビュート・アルバムが捧げられたりするようになってきている現実を目の当たりにして考えてみる。
 こういった状況を生みだしたものは何なのか。

 1967年、当時インディーズからのリリースで、しかも活動の拠点を大阪に置きながら、考えられないほどセールスとして大成功を収めたザ・フォーク・クルセダーズに始まる、一連の流れに思いを馳せてみる。2002年、沖縄に拠点を置いた活動でインディーズながら200万枚以上という、驚異的なセールスを記録したMONGOL800の活躍につながる一貫した動き。マイナーからの逆襲。辺境からの反撃。歴史は繰り返す。

 2003年。時を超え、世代を超えて愛されるスタンダード・ナンバーというものが、ここ日本でも、ついに根付きつつあることを誰しもが感じ始めている。
 何年経っても色褪せない、普遍的な魅力を持ったメロディーと歌詞を有する楽曲。いわゆるナツメロと呼ばれていた、これまでの歌謡曲や演歌の旧作とは異なる一連の作品を、新たなる日本のスタンダードという意味で、ジャパニーズ・スタンダードと呼ぶことにしたい。そのような、音楽史に残る名曲たちと、それらを作り出したアーティストたち、さらにそれらを発見して新鮮な切り口で展開していく若いアーティストたち、新旧の出会いとそれをもたらすコラボレーションの“場”をも含めて、J-STANDARD。(ジェイ・スタンダード)として提示していきたいと思う。

ファイブ・ディー 佐藤 剛