たとえば古くはアトランティックやアサイラム、イギリスならラフ・トレードやチェリー・レッド。あるいはクレプスキュールなんてレーベルもヨーロッパにはあったけれど、いわゆるレーベル・カラーというものをはっきりと感じ取れるレーベルが海外にはいくつも存在する。映画『永遠のモータウン』のヒットがCDのセールスにも跳ね返ったと言われるモータウンなどはその最たるものだろう。一方、翻ってこの国の音楽シーンを見渡したとき、そうした個性が一般の音楽ファンにまで浸透しているようなレーベルが果していくつ存在しているだろう? 正直に言って、このレポートはそうした懐疑的な地点から始まった。逆に言えば、寡聞にして意識することのなかった個性的なレーベルに出会うことを期待していたわけである。
さて、今回のレーベル・ナイトにエントリーしたのは、昨年の9から一気に増えて20レーベル。いわゆるインディーの立場でリリース活動を展開しているレーベルが中心だが、メジャー・レコード会社と契約したアーティストを抱えたレーベルも登場。文字通り、多彩なラインナップになった。
全国のコンサート・プロモーターが結集して生まれた“BET-TALIS”やタワーレコードのレーベル“NMNL”など成り立ちも様々で、その極めつけは四日市大学が設立したレーベル“YUME”だろう。この大学の卒業生とその兄による津軽三味線ユニット、KUNI-KENを第一弾アーティストとして活動を開始したYUMEレーベルでは、当然のことながら音源制作に学生が参加。今回のライブでも、PAや照明などステージ制作の一部を学生が担当した。in the city TOKYOは、アーティストのみならず、音楽制作のスタッフを目指している人に対しても開かれたイベントであるわけだが、思わぬ形でそうしたスタッフの予備軍に経験の場を提供することになったわけだ。