J-Standard/in the city TOKYO 20042004.10.01fri-10.10sun
 in the city TOKYO 2004 PROMPT REPORT from FMP express No.007 OCTOBER

10.01-05 WHOユS NEXT @TOWER RECORDS SHIBUYA   B1 STAGE ONE
5人のプロデューサーが提示した 「次は誰だ」をオリコン編集部がチェック
撮影・小嶋秀雄/文・和田良太(オリジナル・コンフィデンス編集部)

業界関係者を刺激する「感性のチョイス」
 次のスターの発掘という視点でライブを見ることが楽しめるWHO'S NEXT。ブレイク予想の信憑性は、神のみぞ知るところなのは言うまでもないが、政治的理由でブレイクが予想されるものではなく、あくまで選者の感性でチョイスされたラインナップは、業界関係者を刺激する内容となる。各日とも、本当に今後が期待されるアーティストばかりが並んだ。
 10月2日(土)に行われたライターの岡村詩野さんが選んだ8組のアーティストは、本人も「音楽的な共通点は希薄ですが、普通のロックやポップスではない、他人とは違う何かをしたいという気持ちがにじみ出ている連中ばかりです」とコメントしているように、一筋縄ではいかないようなオリジナリティとインパクトのあるアーティストが顔を揃えた。
 そのネーミングの独特のセンスも手伝って、この日のライブを見る前からその存在が気になっていたモダーン今夜。ジャズ、ボサノヴァなんかを感じさせるサウンドは、ホーン・セクションを含む11人編成という大所帯によるもの。「モダン」という言葉をグループ名に冠したことからも連想されるように、一時の昭和歌謡ブームを彷彿とさせる。エゴ・ラッピンのサウンド・アプローチに通じるところがあったが、女性ボーカルのスタイルがエゴの中納良恵とは全く違ったところが新鮮。無理を承知でたとえるなら、オレンジぺコーのTomokoがエゴのライブメンバーをバックに歌ったという感じだろうか。無理矢理なたとえなので、誤解を招きそうだが、似ているからといって決して二番煎じ的なモノではない。「他人とは違ったことがしたい」というメッセージは充分感じられるオリジナリティあふれるパフォーマンスだった。なお、この日は、キャラも立っていて観客の視線を一気にクギ付けにした京都出身の片山ブレイカーズも好演。個人的には5日を通してのベストアクト。デビュー前のスクービードゥーのライブを思い出させるキャラの押し売りがたまらなく心地よい。たぶん対バンキラーなどと呼ばれているのだろう。音は60〜70年代風ロック。
「次の少年ナイフ」がここにいた
 他の日でも、地図要らず芋子なる不思議ちゃん的キャラの女のコが、電子ハープなどを使った不思議な音楽を奏でたトキメキ泥棒、「ギター・インストをポップな音楽に」というスローガンではじめたというアコギ2本の二人組DEPAPEPEなど、より多くの人に観てもらいたい、という気持ちにさせてくれたアーティストが目立った。トキメキ泥棒は、不思議ちゃんキャラに目を奪われると、そのPRIMUSにも通じるバカテク・プレイヤーぶりを見逃しそうだ。A&Rのアドバイスによって、見え方、伝わり方は変わってくるだろう。“次の少年ナイフは誰だ”と言われて久しいが、こんなところにいた、という感じだ。
 印象に残ったものは何もこればかりではなかった。アマチュアに近いスタンスのアーティストもいるわけだが、どのアーティストも個性を発揮していたと思うし、もう一度見てみたいと思わせる何かをしっかり発信していた。
若き才能を押し上げることそれが業界の大きな課題
 最近では、地方発のインディーズ・バンドが全国区に知れ渡るようになることも珍しいことではなくなっている。各地メディアやコンサート・プロモーターの意識の変化によるところが大きいわけだが、それ以上にうれしいことは、一生懸命自分たちの音楽を多くの人に聴いてもらおうとしているアマチュアが各地に存在し、後を絶たないという現実だろう。彼らがいるからこそ次のスターが誕生する。逆にいえば、彼らが居なくなった時こそ、音楽業界は音楽をコンテンツと呼んで、消費される音楽を作っていたことを後悔しなければならないだろう。今こそが業界発展のカギを握る時期ではないだろうか。
 そんな音楽シーンの最末端を目の当たりにすると、いつも「なんで不況なんだ?」という思いになる。この最末端における彼らの衝動をいかに、ビジネスに繋げるかを真剣に考えなければいけない。売れること(=メジャー感をともなうこと)は決して「悪」ではない。しかし、今、不況の言い訳として、その“メジャー感”を「悪」としているような風潮があるのを感じてしまう。「スタイル」としてのインディーズが誤解を伴いながらももてはやされるのは、それが原因ではないだろうか。説得力をもったサジェスチョンができるA&Rがいれば、そんな誤解のないメジャー級のアーティストはもっと生まれるはずだ。音楽業界の未来は、そんな気骨のあるA&Rマンにかかっているのではないだろうか。若き才能を本当の意味でメジャーに押し上げることが、業界の大きな課題だ。そのためのきっかけを与えてくれる場がin the cityだろう。



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