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independence-d 2006
CLUBMUSIC DAY
STREETROCK DAY
SHOCKROCK DAY
 屋外含めて4つのステージが設けられ、国内外の計 34 バンドによる競演となった STREETROCK DAY 。 STREETROCK とは一口に言えど、エモ、オールドスクール~ニュースクール・ハードコア・パンク、メロディック・パンク、ポスト・ロック……等、個々のスタイルでサウンドを築き上げるバンドたちであり、いずれ劣らぬライヴ猛者である。地に足をつけた活動を主とし、そこで共振しあった仲間たちでまたさらなる基盤を作り上げていく。この日ステージに上がったのは、日々そうした活動を続けているバンドだ。とはいえ、それとてほんの一握りに過ぎないわけだが、この場をきっかけに各バンドのライヴに足を運べば、新たに音に出会うこともできる。またバンド側にとってみれば、ここでの交流やアピールで、(たとえば)海外進出やネットワークを拡大していくことも可能。インディペンデントであるゆえの自由さ、フットワークの軽さも持ち得る反面、活動ペースや自身の作品・音楽を世に放っていく上では限りもある。草の根と言われる活動のパワーと、個々のプライドで磨き上げた音楽、その一端を発信し紹介するのが「 independence ‐ D 」だ。

 近年は日本でも大型のフェスやイベントが定着し、その環境やムードを楽しむといった色合いも濃いわけだが、そういったものとは多少趣旨は異なる。オーディエンスもかなり精力的に、各ステージを行き来し、なるべく多くのバンドを観ようといった姿勢がうかがえる。屋外ステージ「 CLOVER STAGE 」も、トップバッターの TEN FOOT POLE ( USA )から熱い盛り上がりだ。晴天に恵まれたとはいえ、海風は刺すような冷たさ。にもかかわらずTシャツ姿(キャミソール姿のつわもの女子も)でステージに張りつきコブシを上げ、シンガロングする。メンバーたちもすぐにジャケットを脱ぎ捨ててエネルギッシュに骨太なパンク・サウンドを叩き上げる。入場ゲートそばだけに、瞬く間に人垣が出来あがる。一方で、屋内は「 DIA STAGE 」が常に満員でドアの外まで人が溢れ返っている。各 20 分と時間はわずかだが、バンド以上にオーディエンスも凌ぎ合いだ。個人的にがっつり観たいバンドがあったが、中には入れず……うまく入れても姿は見えじといった状況でもある。とにかくみな熱心だ。

 またいちばん大きなステージとなる「 SPADE STAGE 」続く「 HEART STAGE 」も個性派が揃った。プロデューサーとしても多くのバンドを手がける Pelle 率いるスウェーデンの FIRESIDE が貫禄の激渋なエモーションを伝え、ピアノでしっとりとかつ丁寧に歌い上げる DREAM STATE ( USA )、若手ニューカマーという豪快さとステージングの妙味を兼ね備えたパンチ力のある RIDDLE 。バンドとして大きくステップを踏んだ OCEANLANE や、強固な NICOTINE 節は汗だくのモッシュを生み出す。そしてマキシマムザホルモンでは、ステージ袖の出演バンドたち、とくに海外バンドのギャラリーが圧倒的。日本が誇るといっても過言ではないダイナミックで質の高いサウンドに、引きずり込まれるお馴染みのパフォーマンス、言葉の壁をするっと壊すこの迫力は最高にウケがいい。スペシャルゲストの Alkaline Trio が独特の憂いある世界観をタイトにえぐり出し、トリを飾った。個人的に、度肝を抜かれたのが THESE ARMS ARE SNAKES 。音源でもニューウェーヴと攻めのハードコアのヘンテコなテンションだが、生はさらに予測不可能なおもしろさだ。バンド数も多く、すべてを観ることはできないし体力勝負な面はあるが、発見は必ずある。内容を充実させ、イベントの基盤固めも含めて今後も次に繋げていく環境が作り上げられていければと思う。

TEXT :吉羽 さおり
海外パンク / エモ勢を中心に据えたメイン・ステージは、発見と驚きの連続で興奮した。
トップの HOUSTON CALLS は音源を上回る躍動感を叩き込み、色彩豊かな鍵盤も良く観客の心をいきなり掴む。 FIRESIDE の穏やかな世界観に浸った後は、 LA メタル風情の派手なルックスで、パーティー・パンクの力業を見せつけた NEVER HARD OF IT の圧倒的な勢いに脱帽。ピアノ・エモの DREAM STATE は Vo も Dr も脱退(!)の危機を乗り越え、別のメンバーが歌う応急処置で体勢だけはなんとか保つ。 LET GO の抜群の歌心に聴き入り、 SECONDSHOT の現代版メロコアに体が上気すると、ここで日本のマキシマム ザホルモンの登場だ。信頼と安心の百戦錬磨のライヴ・バンドである彼らは、壮絶なミクスチャー・サウンドで洋楽ファンを見事捻じ伏せた。トリの ALKALINE TRIO はゴス風の容姿でステージ立ち、陰影に満ちた奥深いロック・サウンドでジリジリと心を侵食し、独自の世界観で観客の多くを酔わせた。
スペードステージに向かって、左壁に設置された小規模ステージは、 NICOTINE を除き、日本の若手パンク勢を中心にしたラインナップで、個人的には普段からよくライヴを観ているメンツばかりだ。じゃあ、つまらないかと言えばその正反対で心底楽しめた。バンドの演奏も観客の盛り上がりもめちゃくちゃ熱かったのだ!  FACT はメロディを絡めた起伏激しい激情音がかっこ良く、今年 10 年を迎えた実力派・ GOOD4NOTHING は西海岸の風を吹かせる豪快なメロディック節で観客を沸かす。煌びやかなメタル調ギターとアグレッシヴな躍動感が凄まじい TOTAL FAT はこの日驚くほどキレがあったし、パンク / メタル / エモなど多彩な音楽性を織り交ぜた RIDDLE の楽曲センスとライヴは相変わらず強烈だった。エモの範疇を超えた傑作 2nd アルバム発表後、ライヴに格段と磨きがかかった OCEANLANE の美メロ・シャワーを存分に浴びると、トリはベテランの NICOTINE が貫禄漲るステージ捌きでビシッと締めてくれた。
屋内のいちばん小さなステージで、出演バンドもほかのステージより圧倒的に多く、計 12 の日本人バンドが矢継ぎ早にライヴを繰り広げた。 HEADBAD 、 THICK BONES 、 DRUM : KAN 、 MOCMOCREW 、 CRYSTAL LAKE 、 VERSUS THE NIGHT 、 ROSE ROSE 、 FADE 、 NEW STARTING OVER 、 BUDDHISTON 、 AT ONE STROKE 、 LOYAL TO THE GRAVE という濃いメンツが並ぶ。全部観るのは到底不可能だったが、昨年に引き続き、場内は一杯の観客ですぐに埋まってしまう状況で、必死になって覗き込む人を多く見かけた。そういう意味でインディー・シーンに対する注目度は俄然高く、好奇心を刺激し続ける熱がここに集約されているんだな、と痛感させられた。
唯一の屋外ステージで、昨年は雪が降ったりとえらく寒かった思い出が蘇ってくる。
今年は天候にも恵まれ、とても快適だった。 TEN FOOT POLE が緩急の付いたメロコア節で激しく掻き回すと、日本の ENDZWECK が漆黒の激情ハードコアをぶちまけ、異様な活気を帯びる。カレッジ生のような風貌で現れた SOCRATIC は、満面の笑みで弾く鍵盤奏者を筆頭に、メロディ主体の親密度の高い歌ものロックを鳴り響かせた。ド肝を抜いたのは THESE ARMS ARE SNAKES だ。 BLACK SABBATH ばりの重量感と野放図な暴れっぷりで熱狂の渦を作り出し、観客も大いに盛り上がる。流麗なアコギを弾きまくる巨漢 Vo 擁するツイン・ドラム編成の3は、メロウな歌と音数の少ない演奏の存在感が逆に際立っていた。極悪グルーヴでエッジ鋭く畳み掛けてくる ARKANGEL の激重音は、もはや問答無用の凄まじさだ。ダイアステージから急遽移った TE' のインスト・ロックも偶然観る機会を得たのだが、実にかっこ良かった。
TEXT :荒金 良介